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執筆者の写真Frontier Valuation

資産台帳が資産を見えなくしている

我々が評価のご依頼を受けた時、有力な資料のひとつとするのが固定資産台帳である。

非常に頼りになる資料ではあるが、実は非常に頼りにならない資料でもある。実のところ、かなり混乱した資産台帳も多い。 資産台帳は企業の持つ資産が全てが記載されてはいるが、企業の持つ資産は絶えず変化している。新しい機械を導入することもあるし、除却することもある。機械まるごとという場合もあれば、一部を修理したりバージョンアップしたりということもある。さらには記帳を担当する人も替わっていくから、一貫性がないことも多い。  

つまり、資産の状態を帳簿に忠実に反映することは非常に難しいのである。

例えば、200万円で購入した乗用車について、数年後に車内のシートを取り替えてアップグレードしたとする。新しく取り付けたシートについては取得原価が分かるのが通常であるから、問題はないだろう。では、新車購入時に搭載されていたシートは新しいシートに取り替えられることになるが、その除却はどうするかという問題が出てくる。一般に細かいパーツまで一つ一つ見積もって領収書に記載されることはないだろう。すると、いくらを除却していいか分からないから、現実には取り外されたはずのシートが、帳簿上は残っていることになる。  

こうした問題はほぼどこでも存在して、実査の際にご案内をいただく方に質問するのであるが、ほぼ100%「わかりません」というお答えをいただくことになる。逆に言えば、詳細な分析なしにただ資産台帳の数字を弄るだけでは、新規再調達コスト把握の段階から既に誤った評価ということになってしまう。 特に大規模で固定的なプラントではこうした傾向は顕著である。ひとつのプラントが資産台帳では数十ないし数百の項目として計上されることも珍しくはない。インフラ資産ともなれば、相当なボリュームになるのではなかろうか。

企業の財政状態をステイクホルダーに誤解のないように開示されるのがバランスシートであるが、課税利益の把握、経営成績の把握の副産物となってしまっているのが現状である。 企業のカレントな財政状態を把握できるのが機械設備評価のメリットである。

評価を担当する一人として、会計とエンジニアリングの融合した有機的な資産管理が可能であることを知って頂ければ幸いである。

 

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