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執筆者の写真Frontier Valuation

ペロブスカイト型太陽電池は日本復活の救世主になるか?

ペロブスカイト型太陽電池とは

ペロブスカイト型太陽電池は、次世代の太陽電池として注目されている新しい技術である。

この電池は、ペロブスカイト構造(化学式ABX₃で表される結晶構造)を持つ材料を利用しており、この構造が持つ優れた光吸収特性により、高いエネルギー変換効率を実現できるのが特徴である。その効率は、研究段階では30%近くに達する報告もあり、従来のシリコン型太陽電池を上回る可能性もある。さらに、製造コストの面でもこの技術はシリコン型に比べて低コストで生産できる点も大きな特徴である。

ペロブスカイト型太陽電池は、製造過程においてスプレー塗布や印刷技術といった簡便なプロセスを採用できるため、従来の太陽電池に必要な高温処理や複雑な工程が不要である。これにより、エネルギー消費を抑えつつ、大量生産に適した低コストな製造が可能となる。また、フィルム状に成形できる性質を持つため、軽量かつ柔軟で、建物の壁や曲面といった設置が難しい場所にも適用できる。この柔軟性は、建築物のデザイン性を損なうことなく再生可能エネルギーを活用できる点で、都市部や屋内利用にも適しており、革新的な技術と言われる所以である。

さらに、ペロブスカイト型太陽電池は、環境への配慮が求められる時代において重要な位置を占めている。従来型の太陽電池が持つ材料や製造面での課題に対し、ペロブスカイト型はその簡便性と低エネルギー消費によって、持続可能性の観点からも優れた選択肢となる。特に、室内光で高効率に動作する性質は、IoTデバイスやセンサー類などの小型電子機器への応用も期待されている。

このように、ペロブスカイト型太陽電池は、シリコン型太陽電池の代替品や補完品としてだけでなく、エネルギー技術の新しい展開を切り開く可能性を秘めている。その高効率性、低コスト、柔軟性、環境への配慮という多くの利点により、再生可能エネルギーの普及を加速し、持続可能な社会の実現に寄与する重要な技術として期待されている。

ペロブスカイト型太陽電池の分野で優位と言われる理由

日本がペロブスカイト型太陽電池の分野で優位に立つと言われているが、その理由として先進的な研究基盤、製造技術、資源調達力、そして国内研究者による世界をリードする研究開発の存在がある。ペロブスカイト型太陽電池を発明したのは桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授であり、世界的をリードする成果を挙げてきた。その後もペロブスカイト型太陽電池の効率向上や安定性確保の分野で世界を牽引している。実用化に向けた技術的課題の解消に寄与しており、日本がグローバル市場で優位性を持つ重要な要因となっている。

製造技術においても、スプレー塗布や印刷技術を活用して製造されるため、精密な工程管理が必要であるが、日本の企業はこれに適した高精度の製造技術を持ち、量産化に向けたプロセスの開発を進めているところである。また、品質管理の厳格さやコスト効率を高める技術も確立しており、国際市場での競争力を高める要因となっている。


さらに、日本が持つ資源調達の優位性も重要である。ペロブスカイト型太陽電池の材料には「ヨウ素」が使われるが、日本は世界のヨウ素生産量の約30%を占める主要生産国で、この供給力により、安定的な材料調達が可能で、他国に比べて供給リスクが低いことが強みになると考えられている。また、国内ではヨウ素のリサイクルや代替材料の研究も進められており、将来的な資源確保の課題にも対応している。資源調達の優位性という面では中国などに後塵を拝していた感があるが、日本の面目躍如となるチャンスが巡ってきたと言ってもいいだろう。


「本当に実装できるか」があまり語られていない

一方で少々気がかりな点もある。ペロブスカイト型太陽電池は薄型軽量で柔軟性もあるため、どこにでも設置できるという利点がある。しかし、太陽電池のひとつであり、発電した電力を消費する負荷と結ばれていなければならない。小型のセンサーやIoT機器を動かすには非常に優位性を発揮する(特にIoT機器を屋外に設置する場合は電力供給が最大の課題になる)のではないかと考えられる。一方で、売電を行うような場合は電力網につながっていなくてはならない。”窓ガラスに貼り付けて発電もできる”といった話も耳にするのだが、どのように電気的な接続をするのかが今一つ見えてこない点が気がかりである。窓ガラスにフィルムを貼付したはいいが、周囲に電線が張り巡らされていれば美観の問題もあるし、電線やコネクタにトラブルがあれば火災発生の危険すらある。この点がクリアできるかがカギとなるであろう。 太陽光パネルの分野ではシリコン型では中国の独壇場となっているが、中国勢はシリコン型とペロブスカイト型で、電気に変換できる光の波長が異なることを利用して、シリコン型のパネルにペロブスカイト型のフィルムを貼付する、タンデム型と呼ばれる太陽光パネルでパネル単位の発電量を稼ぐ戦略を取っているという。このやり方であれば、既存の発電施設のパネルを交換するか、フィルムを張り付ける作業だけで済み、既存の送電設備はそのまま活用できるというメリットがある。 こうした状況を踏まえると、蓋を開けてみたらやっぱり中国勢...といった結果も十分考えられるのである。パネルやフィルムを作ることだけでなく使うこともしっかり考えなければならないのだが、この辺りの連携が悪く「ものづくり」に一生懸命でも「ものづかい」に無頓着な日本の悪いところが出なければいいのであるが。


化学のイメージ - ペロブスカイト構造
化学のイメージ - ペロブスカイト構造

ベランダ太陽光や太陽光フェンス?

それでも、ペロブスカイトが活用できそうな場所はあるのも事実である。サッシなどの窓ガラスは厳しいにしても最近のマンションのベランダの柵はガラス素材のようなものが多いから、こうした場所は十分活用できる。ドイツなどでは既にペロブスカイトではないが、ベランダにソーラーパネルを置き、パワコンで変換した電気をコンセントにつないで自家使用することができるそうである。日本でもこうした仕組みが採り入れられれば、未利用スペースでコツコツ発電量を稼ぐことは出来るだろう。 「ものづくり」と「ものづかい」そして両者を結ぶ仕組み作りが重要であるが、新しいものは何でも反対で、現状では太陽光発電に対して否定的どころか攻撃的な発信が目立つ今の日本では果たしてうまくいくだろうか。

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