19日のNHKニュースが、経産省が一定の要件を満たした事業者による他の事業者の買収を支援する方針であると伝えた。
かねてから経産省は、太陽光発電事業者の乱立を問題視しているという噂を仄聞していたが、太陽光発電事業者の選別に向けた具体的な施策に乗り出したようである。
太陽光発電事業者は「発電事業者」であり、東京電力、中部電力、関西電力などの大資本と同様に電気を供給する義務が課せられている。
電力事業は継続して安定的に電気を供給することを求められ、永続的に電気を供給しなければならないから、設備を維持し稼働させる資本力や技術力、労働力等が高いレベルで要求される事業である。
太陽光発電は東日本大震災後の”脱原発”の流れで急速に普及したが、これは高い買取価格に魅力を感じた事業者や投資家がこぞって参入した結果であり、なかには社会的な使命より収益最優先の姿勢をとる事業者も存在する。 また、太陽光発電事業が特に地方において自然環境や景観を破壊し、国民的なイメージが悪化していることも事実であり、再生エネルギーに対する反感も高まっている状況である。
こうした事情が相俟って、資本力のある事業者に事業を任せたいと経産省では考えているようである。特に固定価格買い取り制度の買取期間満了後は事業者の退出が予想され、その時期は2030年前半になること。さらに原子力発電所の運転が再開されれば電力需給がだぶついて出力抑制(電力会社による買取が停止される)が行われ、事業採算が悪化することが考えられるため、今のうちに手を打っておこうという考えであろう。 設置に対する様々な義務の強化や売電市場の複雑化、不安定化のリスクが高まっている。
売電にしても出力制限のほか、FITからFIPへ買取もシフトしつつある。FIPは高価格で買い取り価格が高い時間帯に売電することで高収益を上げられる仕組みである。したがって、刻々と変わる電力市場を瞬時に見極めなければ収益を上げづらくなり、既に蓄電池とAIを使って最適な売電のタイミングを予測し高収益を狙う事業者も現れている。「置いて発電すれば儲かる」といったことは早晩”遠い昔の話”なるだろう。個人宅の屋上で行う太陽光発電には影響はないが、太陽光発電事業者の選別が始まった今、個人や小資本で太陽光発電による売電事業を行うことはそろそろ終わりに近づいているのではなかろうか。
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