2024年9月4日の日本経済新聞朝刊で、建物や設備を借りて使う「リース取引」で、日本の会計基準を作る企業会計基準委員会(ABSJ)が、国際会計基準(IFRS)と同様にすべてのリース資産について貸借対照表上に計上することを2027年度から企業に義務付けることになったと報じている。3日にABSJが議決したことによるものであるという。
リース資産評価の現状
現在はIFRSや米国会計基準(USGAAP)ではリース取引の資産を貸借対照表上に計上することを求めているが、現状の日本の会計基準においては「ファイナンスリース」に該当するものは借り手が貸借対照表上に資産として計上するとともに、リース債務を負債として計上することを求めているが、「ファイナンスリース」以外の「オペレーティングリース」については貸借対照表への記載が求められていない。「ファイナンスリースは」①実質的に解約ができない、②借り手がリース資産のコストをすべて負担するの2要件を満たす取引をいう。この2要件を満たすのであれば、実態として融資を受けて建物や設備などの資産を購入することと同じであり、貸借対照表記載の論拠とされてきた。 リース取引全計上で考えられる論点
貸借対照表にリース取引全計上となった場合、計上された資産から企業が収益を上げられなければ減損処理の対象になりうる。実際にリース資産である機械設備の減損損失の判定目的の鑑定評価を受託している。 そうなると、2027年以降に新たに貸借対照表上への計上が求められるオペレーティングリースの評価が出てくる可能性も十分に考えられる。 ここで問題となりそうなのが、「回収可能価額」の捉え方である。
減損処理の対象になるのは3期以上連続でキャッシュフローがマイナスの場合であり、損失が出ている状態である。損失が出たままにすれば資金が社外流出してしまうから、企業は赤字事業から撤退し事業に供されていた資産を売却して資金を回収し、利潤が得られる事業に資本投下できる状態に持っていかなくてはならない。
このようなロジックの元で行われる減損損失の判定は、資産を売却して得られるであろう回収可能価額を推定する作業となる。
ファイナンスリースの場合は実質的に所有と同義ということであるから、回収可能価額の判定を行うハードルは低い。しかし、オペレーティングリースの場合は所有と同義とみなすことが難しくなる。となると、資産を返却して事業を手仕舞いすれば済むのであるから回収可能価額は常にゼロということになる。 とはいえ、IFRSが全てのリース取引を貸借対照表に記載することを求めているのであれば、換金価値に過度のこだわるのは誤りであることは明白だろう。
今後の検討課題 - ASAの価値の定義「FairValue」との関連
もっとも、米国鑑定士協会(ASA)で会計目的での評価における価値の定義としてFair Value(FV:公正価値)を設定し、FVは米国財務会計基準審議会ASC820の定義に基づいて設定されている。また日本が国際基準のコンバージェンスでIFRSやUSGAAPの規定との互換性を保とうとしているのであるから、これらの知見を参考にすべきではなかろうか。
実際どうなるかは分からないが、あと2年半ほどのうちにはしっかりと方向性を定める必要があるだろう。
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