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執筆者の写真Frontier Valuation

固定資産の減損に係る動産鑑定評価(機械設備等)を行う際の評価方針

更新日:5月27日

固定資産の減損は企業が行った投資が回収できなくなった場合、その見積もりを財務

諸表に反映するための会計処理です。


固定資産の減損は企業の持つ資産、棚卸資産や不動産、機械設備などの固定資産も対象になります。 処理は次のような手順で行われます。

機械設備の評価は、減損損失の特定の段階で、回収可能額の算定のために必要となります。

回収可能価額は①使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュフローの現在価値)と②正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額のいずれか高い方の価額を採用します。 そして、簿価-回収可能価額が減損損失となります。 「固定資産の減損に係る会計基準」では「時価」について定義されていますが、その内容をまとめると次表のようになります。

 機械設備の場合は観察可能な市場が存在しないものと考えられています。観察可能な市場は株式市場のような取引所が最もよい例ですが、不動産や機械設備などのその他固定資産はそうした取引所は存在しないため、合理的に算定された価格を市場価格に準ずるものとして扱われます。機械設備は不動産ではないため「その他の固定資産」であり、機械設備の鑑定評価は②に当たると考えられます(工場財団の登記がある機械設備の場合、不動産鑑定で対応する余地はありますが、資産の実態や特性を考慮すると不動産ではなく動産として評価を行うことが妥当です。他企業や国際間での比較可能性を求められる状況をも考えますと、世界各国で採用されている、ASAの評価人による機械設備の公正価値をご利用なさることが賢明です。)


上図中の記載にあるようにコスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチを併用または選択して評価を行うことが求められます。 しかしながら、この条件だけではどのような評価を行うべきかが明白でないため、評価を行うことは不可能です。


日本の会計基準においては、2021年から企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」の適用が始まっていますが、対象となるのは金融商品と棚卸資産となっており、機械設備のような固定資産は対象外です。 しかしながら、これらの基準においての国内外の企業間での比較可能性を担保するため、IFRS(国際財務報告基準)第13号「公正価値」の基準を基本的に踏襲し、「時価」=「公正価値」とするフレームワークが示されており(時価算定会計基準第24項、第25項)、機械設備などをはじめとする固定資産も同様に「時価」=「公正価値」であることを前提に、IFRSをはじめ国際的に互換性を持つ会計基準において定められている基準を準用して評価を行います。 米国鑑定士協会(ASA)においては2020年から機械設備専門部会の価値の定義として「公正価値(Fair Value)」を設定しています。公正価値は会計目的の評価において採用すべき定義です。

The price that would be received to sell an asset or paid to transfer a liability in an orderly transaction between market participants at the measurement date.

Source: Financial Accounting Standards Board Accounting Standards Codification Topic 820 (ASC 820)

測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取られる価格、または負債を移転するために支払われる価格。

定義自体は米国財務会計基準審議会会計基準成文化トピック 820をそのまま規定しています。なお、ASC820には価値判定の前提となる考え方が示されており、この内容に沿って評価作業を行います。


ASC820.10.35.10Eでは市場参加者の観点からみた最有効の使用を方法によって、どのような状態を前提として評価を行うか、2つの場合を示しています。

会計目的の評価のご依頼をいただいた場合には、この規定に従い最有効使用の判定を行って評価を行います。 なお、最有効使用の判定は、所有会社の営業成績ではなく、市場参加者の最有効使用という観点で行います。例えば、所有会社の経営成績が極めて悪い場合においても、他の市場参加者であれば収益を上げられると考えられるケースであれば、設置状態のままを前提としての評価になります。 日本基準の会計原則に適用する評価においては、回収可能価額を求めることになりますので、特にご依頼上の要請がない場合には回収可能価額を求めることとしています。

回収可能価額は上記の通り「時価-処分費用見込額」です。 以上、当組合で減損損失の判定のための時価を求める場合の評価の考え方をご説明いたしました。価値評価をただ単に公式に当てはめて計算できればいいのではなく、その前提条件や理論的基礎についてしっかりとしたバックボーンを持つことが必要です。そうでなければ厳しいアカウンタビリティに耐え抜くことはできません。しっかりとした理論的基礎を理解し、第三者性や公正性に疑念を持たれないために定められたASAの倫理規定を遵守できる当研究会所属のASA資産評価士にご用命いただければ幸甚です。 それでは、こちらへお進みください。

 
  • 上記は2024年6月以降にフロンティア資産評価研究会の会員が固定資産の減損に係る機械設備評価を受託した際の評価方針を示したものです。当会の見解として表明するものであり、会員外の評価専門家の評価作業内容を拘束するものではありません。また、会員外の評価専門家への当記事に関するお問い合わせや質問はご遠慮ください。

  • 記載内容は2024年5月時点の内容であり、その後の基準改定等で相違が生じている場合があります。

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