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Hideyasu Matsuura

事業性融資の推進等に関する法律と動産の鑑定評価

 去年の終わりか今年の初め頃だったか、事業再生のセミナーに参加した時、「これからは機械設備の評価が必要になりますよ」と講師の先生から伺いました。  当時はまだ、おぼろ気なレベルの話だったのですが「事業性融資の推進等に関する法律」の法案が実際に出てきました。

制度については金融庁が法案の概要と説明資料で公表しています。


 そもそも、日本に機械設備評価を本格的に導入しようという動きになったのは2000年代前半にバブルの後遺症に苦しんでいた時に、不動産以外の資産でも融資ができるようにしようという機運が高まったのが一つのきっかけでした(その他の大きな理由はIFRSの導入)。

 しかしながら、既に信用保証制度という使い勝手のいい制度があったこと、低金利下でコスト高の動産担保融資をあえて採用する必要はなく、金融機関も手がかかる融資であるとして敬遠したこと。本来、スタートアップやDIPなど信用力は低いが伸びしろがあるクライアントに有効性が高いスキームを不良債権処理の手段として利用としていたことなどの要因が重なり、ほとんど利用されることはありませんでした。  このスキームを見れば、従来の延長ではないかと思うのですが、今回は信用保証制度が危機的な状態にあることが背景という見方があります。  日本の中小企業金融を支えてきた信用保証制度ですが、COVID-19への対応として、信用保証協会スキームを使った実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が重荷になって限界を迎えていることから、この事業性融資の推進の話が出てきたようです。


 ある意味、我々としては面目躍如となるいい機会なのですが、少々不安もあります。  一つは、動産評価の基準はあるものの、もう少し固める必要があることと、期待倒れの状態で当初参入したプレーヤーの撤退が進んでいる状態で圧倒的にマンパワーが不足していることがあります。また、無形資産をはじめとする事業評価も、既にCOVID-19以前にアメリカでは品質が問題にされて、CEIV(The Certified in Entity and Intangible Valuations)制度やCEIV認証を受けた評価人が遵守すべきMandatory Performance Framework(MPF)が制定されていましたが、日本では事業評価自体が漠然としていてまだそのような動きがない点が懸念材料です。


 もう一つは、実際に評価する際に使う各種指標が整備されていないことや、評価対象となる資産のリストアップが適切に行われているかという、実務上の懸念です。

 最近は、特にコストアプローチについて経済的退化を反映させることが求められるようになっているのですが、その根拠となる数値的なデータが得られないことが多く、非常に苦労する場面が多々あります。また、機械設備等に関していえば、監査法人による監査の対象となる大企業でも台帳と現物の相違があることがほとんどであるのに、中小企業ではどのくらい管理されているのかが未知数であることです。  以前、不動産で金融機関の担保物件のモニタリングをやった際にも、大昔に除却されている建物の登記が抹消されずに残っていて、工場で勤務歴が最も長い方にも帯同していただいて現況確認をしたことがありました。  スタートアップ向けの融資であればこういった心配はないとは思いますが、実際どういう使い方になるのかはっきりしない状況では不安材料のひとつです。  スキームを見ると、すべてをこなせるスーパープレイヤーはまず存在しないと思われますので、チームを組んで取り組むことにはなるのではないかと予想しています。  機械設備の評価が何か、皆さんに知っていただけるいい機会になると思いますので、啓蒙活動に取り組んでいきたいと考えていきます。お声がけいただければ、説明いたしますので、どうぞお声がけください。

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