メダルでも金・銀・銅があるが、銅は金や銀と比べ身近な存在に感じる。 硬貨にしても、金貨や銀貨にお目にかかることはなく、時々発売される記念金貨や銀貨は高額である。方や銅と言えば10円玉のイメージである。銅の鍋は家にあっても金や銀の鍋にはまずお目にかからない。 とはいえ、銅は金や銀より希少性には劣るものの、金属としては重要で価値が高いものである。その証拠に最近は太陽光発電施設での電線の盗難が相次いでいる。銅の電気伝導率は優れていて、銀(Ag) が106.4%IACS、銅(Cu) 100%IACS、金(Au) 71.8%IACSと銀に次ぐ高さである。他の材料は鉄(Fe) は17.6%IACSなど10~40%IACSであり、金・銀・銅が電気関係に好んで使われる理由である。 脱炭素の要請から、近年動力源は化石燃料をエネルギーとする内燃機関から、電気エネルギーを回転エネルギーに変換するモーターが主流になりつつある。モーターはコイルがエネルギーを生み出すから、コイルはなくてはならないものでありその電線としてよく使われるのが銅である。 こうなると、世界中から銅の引き合いが高まるのは当然であり、2023年4月にポルトガルのリスボンで開催された国際銅研究会(ICSG)では、銅の需給バランスについて、2023年は114千tの供給不足、2024年は298千tの供給過剰との予測が立てられたという。 今後も銅の需要は高まると予測される一方、銅鉱山の開発は容易ではない。日本でも足尾銅山の開発により排煙、鉱毒ガス、鉱毒水などの有害物質が周辺環境に著しい悪影響をもたらした「足尾鉱毒事件」が広く知られているように、環境への負荷も大きい上に、利害調整も複雑である。日本では全ての銅山が閉山しており、輸入に頼っているが、主な産地である南米のペルーなどは政情が安定しておらず供給リスクがつきまとっている。 こうしたことから銅不足は長期間にわたって続く見通しで、銅の希少性は高まることはあっても低くなる可能性は限りなく低いと考えられている。 そうなった場合、限りある資源をいかに有効に使うかが焦点になってくる。市中には銅を含有する製品が多数あるが、中には廃製品となったものもある。こうした廃製品の中から資源を取りすことも可能であり、あたかも都市の中に鉱山があるのと同様であることから、鉱山での採掘に例えて都市鉱山と呼ぶ概念が存在している。今後は都市鉱山を宝の山として有効に活用することで資源不足に対処することが重要になってくる。 都市に鉱山があると考えると夢のような話であるが、現実はゴールドラッシュの中で金を採掘するのと同様の難しさもあるのも事実である。銅のほか、金や銀その他レアメタル等金属は電子基板や半導体の中に含まれているが、資源として使うためにはそれら廃品の中から金属を取り出さなければならない。また、個々の廃品に含まれる金属の量はごくわずかであり、資源として流通させるにはまとまった量を確保する必要がある。 そのため、廃品を効率よく集め、その中から有用な資源を分別して精製するシステムなくしては成り立たないのである。また、技術的にリサイクルが可能だとしてもコスト面で割に合わないようであれば、これまた成り立たないのである。 近年では機械設備評価がリサイクル業界からも注目されてきていて、リサイクルに着目した評価人向けのセミナーもいくつか開催された。一般的にスクラップ価値は低位ではあるが、希少金属の構成割合が大きい場合などは、スクラップバリューが比較的に高水準になる可能性もある。税務会計のように残存価値を一律取得価額の10%というような対応をしていると価値を見誤る危険もないとは言い切れない。 中古市場、リサイクル市場も注視して評価にあたり必要が出てくるケースもあるだろう。 その他、金属が使われたものが代替素材に取って代わられることも考え得る。金属が高コストとなれ代替ができるものであれば代替素材が開発される可能性が高い。以前「プラスチックはなくなるのか?~プラスチック業界は衰退する?のエントリでもご紹介したように、プラスチックも環境面から梱包材等としては敬遠される動きがある一方で、他素材を代替する素材としてプラスチックが採用されるケースが多い。金属資源の供給不足も素材シフトを後押しする可能性がある。 この辺りは新規再調達コスト、超過資本コストの考察にも影響する可能性はある。 脱炭素に向けた動きが、資源あるいは経済活動の持続性を危うくするとは皮肉めいたものを感じるが、意外なところに意外な影響が出る可能性もあり、複眼的な観察が必要になってくるかもしれない。
銅不足が予測されている
更新日:2023年12月26日
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