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太陽光発電は野立から屋根置きへ

執筆者の写真: Frontier ValuationFrontier Valuation

 今朝、1月31日付の日経新聞朝刊によれば、経済産業省が企業が工場や倉庫の屋根に置いた太陽光パネルによる電気を高く買い取る制度を2024年度から始めるという。  記事によれば固定価格買取制度(FIT)の買い取り価格を平地の太陽光より2~3割程度高く買い取る見通しであるという。  野立の太陽光発電施設は、適地が減っている。日本は平地が少なく、山間地などにも発電施設が進出した結果、土砂災害リスクや景観の面で問題視されることが多くなった。自治体レベルでも太陽光発電施設に制限を加える自治体が増え、野立の太陽光発電施設の立地は年々困難になっている。  そのため、建物の屋根を有効活用する方向に舵を切ったようだ。こうした流れは数年前から噂レベルでは耳にしていたが、いよいよ本腰を入れてきたという印象である。  とはいえ、疑問もいくつかある。  最近は、FITからフィードインプレミアム(FIP)に太陽光発電補助の主軸を移しつつある状態だったのに、今更FITで推進することには若干の違和感を感じる。再エネ賦課金は年々上昇している。最近はLNG等の燃料価格の高騰が激しく、そちらに注目が奪われがちであるが、再エネ賦課金も着実に上昇している。FIPへの移行は負担の増加に歯止めをかけるための措置であったが、こうした流れに逆行してFITに更に上乗せの買取り価格を設定することは電気料金の負担増という面で果たして適切な施策であるかは疑問に感じるところである。  まさか、電力の価格高騰に便乗して、いずれ燃料価格も収束することを見越して、こっそり負担転嫁を目論んでいるようなことはないと信じたいものだ。  もう一つはFIT以外の自家消費のための発電施設が増えている点だ。再生可能エネルギーの推進初期の段階では、主力は太陽光発電による売電事業が一翼を担っていたが、最近では企業経営に環境面での要請が強くなり、特に大企業を中心に再生可能エネルギーの導入などにより温室効果ガスの排出削減が義務づけられている。こうした流れに乗って企業が自社の生産活動、営業活動に利用する電力を自社で発電するケースが増えている。こうしたケースではFITとは違う枠組みの補助金が活用されるケースが多く、補助事業で導入した施設は売電事業の用に供することが禁じられている。

 大規模な工場や建物を有する企業は、売電ではなく自家使用する電気を賄うために屋根上の空きスペースを活用することをまず考えるのではないかと思われ、FITの仕組みを使って促進することが果たして、期待するアウトカムにつながるかやや懐疑的にならざるを得ないのである。  東京都の太陽光発電施設設置義務化の問題の際に顕著であったが、最近では、太陽光発電自体に対する否定的な意見も強くなっているように感じる。原子力も含めてエネルギー資源を海外に頼らなくてはならない日本では、太陽光パネルの購入で海外に頼らなければならないものの、いったん設置すれば長期間発電可能である太陽光発電のメリットは決して小さくない。バランスミックスは大切であるが、まだ導入を増やす必要はあるだろう。


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