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執筆者の写真Frontier Valuation

登記簿の元号をよく見たら

不動産に関わっていると必ず見るのが登記簿です。

以前は紙の登記簿でしたが、平成の初め頃から徐々にコンピューター化してゆき、2000年代前半、平成20年頃までにはほとんどがコンピューター化されました。


紙の登記補は明治時代に作られたものもありました。その頃は毛筆で、中には達筆すぎて判読するのも難しいようなものもありました。

コンピューター化してすぐの頃は慣れない所為か、裁判所の執行官の方も「下線を見落として危うく大変なことになるところだった」と仰っていました。

下線はすでに抹消された事項なのですが、紙の時代は抹消事項は赤い線で字の上に線が引かれていたのですが、コンピューターの場合は字の上に直接線を引くような消し方はされないので、紙の時代の登記に慣れ親しんだ人にとっては紛らわしい消し方だったようです。


あと、紙の登記簿の時代、特に明治や大正などの古い時代の登記は毛筆で、昭和の終わり頃の登記はタイプライターの活字でしたので、書面を見れば古い登記だということは一目で分かったのですが、コンピューター化された登記簿は皆無機質な活字ですので、しっかり読まないと間違えることもあります。


同じ「4年」でも大正4年の登記が最新だと大変である。
同じ「4年」でも大正4年の登記が最新だと大変である。

今は令和4年ですから、「4年」と書いてあると、無意識のうちに令和か平成かな等と思い込んでしまします。ただ、やはりなんとなく違和感があってもう一度見てみると、昭和あるいは大正だった等ということも時々あります。


しかも、最後の登記が「昭和」だったり「大正」だったりするとそれは非常に厄介なことでもあります。

昭和4年は1929年。大正4年は1915年です。それぞれ、93年前と107年前ということになります。この時0歳だった人でも今年93歳、107歳で、まだ存命かもしれませんが、不動産を所有できる年齢を考えると、さらにプラス数十年ということになり、かなりの確率で故人の名前での登記と考えられます。

そうなると、相続人がいて、さらにその相続人がいる可能性すらあります。個人情報の壁がありますので、相続人を探すことができるのは弁護士や司法書士など、職権で戸籍などの情報にアクセスできる専門家に限られてしまいます(不動産鑑定士でも調査はできません)。すなわち、そういった登記のある土地は今話題になっている「所有者不明土地」なのです。

何かしようとなれば、専門家の力を借りなければならず、所有者不明土地が土地利用を阻害する要因にもなっています。


こうした所有者不明土地の発生を防ぐため、2024(令和6)年4月1日からは相続登記が義務化され、住所変更等の登記も義務になります。


相続が義務化になると、また他にもいろいろな問題が出てきそうです。

以前、町内会の集会所の土地が70人の共有になっていて、登記はされていないが権利者が300人以上になっているという案件に出会ったことがありました。

全部事項証明を取得すれば所有権に関する登記が表示される甲区だけでもものすごい量になりそうですし、全員の持分を算出するとなったら大変な作業になることは間違いないでしょう。 相続登記や住所変更等の登記の義務化は所有者不明土地の発生を回避する上では有効ではあるとは思いますが、どの程度実効性があるかは未知数で、さらに現在ある所有者不明土地の解消につながる可能性はあまり高くないように思います。 積み残された課題は大きく、制度改正があっても、当分の間は所有者不明土地の問題にぶち当たることは避けられそうにないでしょう。

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