先月(2022年9月)23日から24日にかけて静岡県内では台風15号の影響を受けた線状降水帯による豪雨に見舞われ、山間地を中心に土砂災害の被害が出ました。
特に静岡市清水区においては水道の取水施設が被害を受け、最大で6万戸が断水しました。断水は12日目の昨日6日に解消しましたが、清水区では区内を流れる巴川が氾濫して浸水した地域も多く、断水が氾濫の後片付けにも支障となりました。
インターネットのSNS上などで流れている情報を見ると、自衛隊への出動要請の遅れや、静岡市長と県知事の不仲説ばかりがクローズアップされていますが、なぜこれほどまでに大規模な断水に至ったかについての考察は少ないように思います。
今回の断水ですが、令和2年度まで静岡市の上下水道経営協議会の委員をしていた私にとっては忸怩たる思いを感じるものでした。
現在の 2003年(平成15年)4月1日に旧静岡市と旧清水市が合併し、2005年(平成17年)4月1日に政令指定都市になり、旧清水市の区域が清水区になりました。合併はしたものの、引き継いだインフラは旧市のものであり、制度的にも当初は1市2制度といわれるように旧市の制度が残っていました。
当然ながら、水道のような巨大インフラは短期間に構築できるものではなく、旧市のものを引き継いでいます。
協議会などでもよく議論されていたのは、清水区の取水設備が渇水に弱いという点でした。
清水区の水道は、区内を流れる興津川から表流水を取水しています。表流水とは地面の上を流れる川の水で、川の水を取って水道水にしています。一方、旧静岡市は主に安倍川の伏流水を取水しています。伏流水は地面の下を流れている水で、これをポンプで汲み上げて水道水にしています。その他、複数箇所の水源で地下水を汲み上げて使用しています。
地面に水を撒くと、土の上であれば水は地面に吸い込まれてしまいます。そして地面が吸い込みきれなくなると地表で水たまりになったり、流れ出したりします。川の水も同じことで、目に見える川の地面の下にも水は流れていて、地下で吸い込みきれなくなると地表面を流れます。
つまり、地面の下を流れる伏流水や地下水は地表を流れる表流水に比べて水量が安定していて、渇水に強く、表流水は水量の変化を受けやすいのです。そのため、表流水が渇水に弱いと問題視されていたのです。
また、清水区の水源も今回詰まりを起こした施設への依存度が高いため、影響が広範囲に及んでしまうのも弱点でした。影響を少なくするには水源の多重化が必要になります。
しかしながら、今回のように表流水を取水設備が詰まる可能性といったことは少なくとも私の知る範囲では議論されていませんでした。
毎年のように全国各地で豪雨災害が起こり、流木が橋に詰まって水圧で流出するといった被害も出ていることを考えれば、少し考えれば思いついきそうな気もします。残念ながらこうしたことは、実際に被害が起こってみないと気づきにくいのが現状です。また、気づいたとしても、改善には取水方法の改善や水源の多重化などが必要で、膨大な費用と長い期間がかかり、具体的な対策を取るまでにはならなかったと思います。
特に、最近は全国的にインフラの老朽化が問題になっており、静岡市では水道管の更新が他の政令指定都市に比べても遅れ気味であるため、本格的に着手に乗り出したところです。 人口減少や節水機器の普及で水需要は減退傾向が強く、ダウンサイジング指向が強くなっていますが、水源の多重化といっても、水の確保は自然相手のもので条件を満たす水源を確保することは思っている以上に難しく、設備の強靱化、冗長化は場合によってはコストアップにつながるだけに双方の要求を両立することは容易ではありません。
今回の事例をどれだけの水道事業者が自分事として対策を考え、実行できるか。興味深いところです。
※本記事は筆者の見解であり研究会の公式見解ではありません。
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