先日、古民家のお掃除のボランティアに参加しました。お掃除も一通り終え、参加者一同お茶を飲みながら雑談に興じました。建築士の方からかつてあったエピソードを伺いました。
お宅、下手ですね。
建築士さんによれば、だいぶ以前の話で、鉄筋コンクリート造建物を設計を依頼され納品したところ「お宅、下手ですね。」と依頼者から言われたそうです。依頼者曰く「東京に設計が上手い建築士がいて、もっと安く上げてくれる」とのこと。
実は、その「上手い建築士」こそ、構造計算書を偽造したとして社会に大きな問題を引き起こした、元一級建築士だったのだそうです。
そもそも、やってはいけないことをやっているのだから、上手い下手の問題ではないのですが、建築の専門家でなければそんなことは分かりません。いや、あの問題の時は建築の専門家ですら見逃していたことが問題になったのです。
3年に一度の講習
その後、別の建築士の方とご一緒したのですが、ミーティングの日程調整していたところ「近々定期講習があって大変だ」という話題になりました。
構造計算書の偽造事件の後、事件を起こした建築士のみならず、建築士全体に厳しい措置が及んだそうで、事件後は「運転免許で言えば、免許を見せただけでは済まなくて、その場で実地試験をやらされるような厳しさ」だったといいます。今でも3年に一度定期講習があり、受けないと懲戒や業務停止処分、講習には試験があるので「講習の前にはしっかり勉強して行く」のだそうです。旅客機のパイロットは半年に1回チェックがあり、これに合格しないと乗務が出来ないのだそうですが、他の資格で更新講習だけでなく試験まで課されるものは珍しいように思います。逆に、それだけ構造計算書の偽造が社会に与えた影響が大きかったということでもあります。
構造計算書偽装事件のあと、計算書が偽装された建物の鑑定評価についての論文が出ていましたが、建物の倒壊のシミュレーションまでしていたのには驚きました。幸いにして構造計算書が偽装された建物で取り壊された建物はあったものの、倒壊した建物はなかったようです。それでも億単位の費用をかけて建てられた建物が違法と判断され取り壊された損害だけでも非常に大きいものでした。
社会的信用の重さ
複雑で素人には分からない専門的なことをやっているが上に一度「疑わしい」と思われてしまうとその疑念を晴らすことは容易ではありません。さすがに構造計算書偽装事件のように別々に作ったものを切り取って合体させるようなとんでもないことをする人は滅多にいないはずですが、疑い出すと皆やっているように見えてしまうのが恐ろしいところ。 自分だけでなく皆様にもご迷惑をおかけしないよう、日々業務に当たらなければならないと再認識したところです。
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