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Hideyasu Matsuura

日本電産の子会社が歯車工作機械の下取り・買取りをはじめる


日本電産といえば小型精密モーターで世界一のシェアを持つ企業で、M&Aに積極的な会社としても知られています。工作機械の分野では三菱重工工作機械を買収して日本電産マシンツールとして自社の傘下に収め、老舗工作機械メーカーOKK(大阪機工から改名)も子会社化するなど、工作機械の分野でも影響力を強めています。その、日本電産マシニングツールが先週5月18日に歯車工作機械の下取り・買取りの中古機械ビジネスを開始したとプレスリリースしました。


SDG'sと中古機械

近年、SDG'sの考え方が急速に浸透しつつあり、「つくる責任つかう責任」が盛り込まれていることもあり、中古機械の取引が活発になってゆくという見方が支配的です。

プレスリリースによれば、下取りや買取により最新機への買い換えを促すと共に、下取りした機械はレトロフィットやオーバーホールによって性能を向上させた機械に再生するとのことです。

ちなみにレトロフィットは古くなった、あるいは劣化した機械や装置を改造して新式の技術を組み込むこと、オーバーホールは機械などを分解して点検や修理を行うことと明記されています。

中古機械の流通とサポート

評価の際にご依頼の方からお話を伺うと、同じ中古の機械を買うなら製造メーカーが取り扱っている機械を買いたいという声をよく聞きます。

製造メーカーの方がその機械に精通していて、メンテナンスの品質にも信頼が置けるからと言うのがその理由です。中には使用している機械を徹底的に研究して弱点を予め改造しておくようなユーザーもあるとのことですし、サードパーティーの流通業者にもメーカー以上に精通しているケースもあるようですが、一般的にはメーカー純正の中古機械の方が信頼は厚いと言っていいでしょう。

既存のメーカーでも修理サポートについては強力な体制を敷いている会社もあり、以前JIMTOFでファナック社のブースに伺ったところ、「30年前の機械でも部品を見つけて修理できる」と担当者は話していました。 とはいえ、中小の機械メーカーの中には自社の中古品の流通を敵対視して、購入時にユーザー登録したユーザー以外からのサポートは受け付けなかったり、ライセンス料を請求するメーカーも存在します。 現状のようなサプライチェンリスクがあることや金属などの鉱物資源も中長期には枯渇の方向に向かっているとされているため、メーカー自身が中古機械の流通に積極的に乗り出すケースもこれからは増えていくかもしれません。ただ、日本電産マシニングツールのプレスリリースからも新造品への転換時に下取りした機械を再生するとされていますので、あくまでも新造品が軸になることは間違いなさそうです。


評価の観点から

評価の観点からいうと少し厄介な問題も生じます。

新造品の取得価額は新規コストつまり再調達コストとして扱うためコストアプローチの範疇になりますが、中古品の取引データは新規コストと認められませんので、コストアプローチで扱うべき範疇になります。中古品の場合、原始取得時の価格や製造時期が不明なことも多く、コストアプローチの適用のハードルが高くなりがちです。機械のトレーサビリティが確保できればある程度解決出来そうですが、大量一括の評価の場合にこれらの履歴を一つ一つ調べ上げるのは至難の業になるのではないかと思います。

とはいえ、中古品がオープンな市場で活発に取引されれば、マーケットアプローチの適用可能性が高まり、評価で算出する公正価値の実証性も高まりますから、歓迎すべきことではあると思います。

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