EUタクソノミーの破壊力① から続く
「欧州グリーンディール」や欧州グリーンディールを実現するための具体的施策であるEUタクソノミーがなぜ世界的に影響を持つのか。ヨーロッパ連合(EU)は地球環境の持続可能性に危機感を持ち自ら環境政策に投資をする姿勢をみせていますが、公的セクタの投資のみでは限界があり、民間の資金やリソースを巻き込んで環境政策を実現しようとしており、民間セクタでも経済活動に大きな影響力を持つ投資家や大企業に対し、地球環境の持続可能性に合致した投資にインセンティブを与えると共に、投資家や企業に対して情報の開示を求めていること。また、世界経済に大きな影響力を持っている年金マネーは公的な色彩が強く、環境投資を選好しやすいこと。世界的にも地球環境の持続可能性に対する関心が高まっていることなど、グリーンディールが選ばれやすい様々な条件が揃っていることが背景にあります。
とはいえ、EUタクソノミーが浸透してくれば、難しい判断を迫られるケースもでてくるのではないかと予測されます。
気候変動の緩和 再生可能エネルギー生成・貯蔵・使用やエネルギー効率改善等により温室効果ガス排出の回避・減少、除去促進による安定化
気候変動の適応 現在または将来の気候による悪影響の減少、気候変動への悪影響増加の回避
水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全 水資源または海洋資源の良好な状態
循環経済への移行 循環経済、廃棄物抑制、リサイクル社会への移行
汚染防止・管理 汚染からの保全を高度化
生物多様性とエコシステムの保全と回復 生物多様性や生態系サービスの保全や改善
例えば、気候変動の緩和を目的に効率の良い機器の導入を積極的に進める一方で置き換えられる旧式の機器は廃棄物になり、循環経済への移行が果たせるのか。逆に廃棄物の抑制のために機器の入れ替えに躊躇すれば効率改善が妨げられ、気候変動の緩和は難しくなることも考えられ、双方の両立には費用面だけでない環境面からの検討も重要になってくる可能性があります。
特に機械設備評価を担当する立場としては、機能的・経済的な退化に関してコスト面ではなく環境面からも分析を行う必要が出てくること、それ以上に貨幣額を基盤として成り立っている今の評価の枠組みそのものにも変化が出てくる可能性も考えられます。 また、環境面も温室効果、気候変動のみならず、水資源への影響、日本では再生可能エネルギー施設が起こす温室効果ガス削減以外の環境問題(例えば太陽光発電施設が傾斜地に設けられることにより土砂災害を誘引する)を起こし、見方によっては「グリーンウオッシュ」ではないかと考えられる例も数多く見られますが、そうした問題に果たして対処できるのかなど、疑問もあります。 SDG'sやESGといったいまいちピンと来なかったワードがこれから急速に社会経済活動や日常生活にいろいろな影響を与える可能性があります。実際にEUタクソノミーの破壊力が大きいかそうでないかはここ数年で徐々に結果となって現れることでしょう。
Comments