民家の活用と再生を担うある団体に所属している。 その団体はまだ歴史は浅いものの、醸造関係の旧家の再生に取り組み、地域の協力もあって今ではその物件を借り受ける団体が現れ、週末を中心にマルシェを開催したり、ハンドメイドクラフトのショップが設けられたりと、順調に運営されている。 また、別案件で山間地の空き家再生に取り組んでいて、空き家を使って文化活動に使うベンチャー企業にサブリースで貸し出しを行っており、こちらもまもなく稼働を始める予定だ。 さらに、最初の旧家再生の様子を見た方から別の案件が持ち込まれた。山裾の空き家になった農家と裏山の耕作放棄されたみかん山の再生である。私も興味本位で見学会に参加したが、現況把握が必要と言うことで現地調査をすることとなった。最初の2案件は団体のメンバーとしてただ見学するだけというポジションだったが、この案件には少し入り込むことになった。 不動産、有形資産の現況把握は20年以上やってきたからお手のものであるので、様々な資料を集めて物的な特定や法的規制などについて明らかにしてゆく。 民家と農地の再生ということであるが、いろいろ調べれば調べるほど両者のつながり、循環というもの、さらには地域との関係というところから考えなければならないと思うようになっている。
エコロツジ
日本では馴染みがないが、海外にはエコロッジ呼ばれる宿泊施設があるという。たまたま目にした雑誌で紹介されていた。 エコロッジは「地域環境の保全に役立ち、地域社会を巻き込み利益をもたらす、環境的にも社会的にも配慮された小規模な宿泊施設」だという。 この記事を見て思い出したのが、新婚旅行で行ったスウェーデンのダーラフローダという小さな村にあるホテルである。 ダーラフローダは首都ストックホルムからボーレンゲという町まで特急列車に揺られて約3時間。そこからバスで40分ほど。バスも高速道路を走るようなハイデッカータイプで一般道を走るもののかなり飛ばして走って40分である。
何もないイナカの村ではあるが、どこで写真を撮ってもインスタ映えするような綺麗な村で日本のイナカではないような美しさにすっかり魅了されてしまった。何よりも食材も土産物も地域の中で循環していて日本の観光地にあるような商業化されたところがないのが興味深かった(但し、スウェーデンなので物価はかなり高い)。 商業主義に走ったような素振りは見られないけれど、しっかりビジネスとして回していて、人も動物も風景も温かい、プライスレスな豊かさが今でも強く印象に残っていて、一生のうちでもう一度行ってみたいと思っているのがダーラフローダとあのホテルである。
循環を生み出せるか
空き家も、耕作放棄地も市場の求めるニーズに合わず、循環から外れてしまった資産である。マーケティングが重要視されている中で市場のニーズに合わないものは淘汰されていくのはある意味当然であって、それが資源配分の最適化である。しかし、市場に任せておけば全ての問題は解決されるかというとそうではなく、人間の経済活動に地球が耐えられなくなるという危惧は強い。そこで生まれたのが、SDG'sやESGという概念である。 前出の雑誌ではエコロッジがESG投資の投資先として海外では注目を浴びているが日本の観光施設はエコロッジとはほど遠く、地域の経済循環とは切り離された循環の中にあり、地域と旅行者とのつながりが薄いことから、ESG投資の対象として端から見られていないとのことである。 つまり、海外では地方の小規模な経済循環にもしっかりとマネーが浸透する仕組みができているということである。日本でも地方を中心にこうした経済循環を生み出せるかが今後の鍵になるかも知れない。 今直面した課題にどう活かせるかは定かではないが、循環を生み出すことが必要条件ではないかと思ったところである。
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