ここのところ、「将来の鑑定評価をして欲しい」といわれることがある。
結論から言うと、将来時点の鑑定評価はできない。いや、やってはならない。 米国統一鑑定評価基準(USPAP)や不動産鑑定評価基準でも予測できない将来の評価はするべきでないとされている。
将来の鑑定評価が忌避されるワケ
将来時点の評価は、対象物の特定から価値を形成する諸要素に至るまで、現時点で分かっていること以外は全て不明で、仮定、想定に基づくものとなってしまうのでやってはならないというのが原則的な考え方だからである。
少なくとも公正価値の評価制度は事実を踏まえた予測に基づくものであって、事実を踏まえられないような評価は、公正価値の評価とは言えないのである。
機械設備などの動産の評価の場合は、実査日=評価基準日とするのが基本となっている。動産は原則として定着していない動かせるものであるから、実査日と評価基準日を別の日にしてしまうと、評価上の対象物が現物と一致しない可能性が出てきてしまうからである。
とはいえ、企業会計に関する評価の場合「貸借対照表日が評価基準日」と指定されることも多く、こうした案件が複数あると、同じ日にあちこちに実査に駆け回らないとならないから、実査日=評価基準日とすることは難しい。また、貸借対照表日を過ぎてからご依頼をいただくケースもあり、そうした場合は貸借対照表日に実査することは不可能であるから、評価上の仮定を設定すること等によって処理することになる。
明日のことさえ誰にも分からない
先日2月13日の深夜に福島県沖を震源とする強い地震があり、東北地方を中心に被害が出ている。何もないのであれば大きく価値が変動することはないのだが、評価対象物が損傷したり、滅失ということになれば価値評価にダイレクトに影響が出る。不動産であっても建物が破損、倒壊、焼損したり、土地であっても地震で液状化したりと物の価値に影響を与えるような現象は起こりうるから、予測できない将来の評価というのは困難なのである。
もちろん、評価人が評価という行為を離れて、単に将来の経済見通しや市場予測を語ることまでやってはいけないということではない。ただ、その場合もズバリ将来のモノの価値を言い当てられるわけではなく、一評論家としての域はでないものであるからご容赦いただきたい。
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