米国鑑定士協会(ASA)の評価人養成を受けていた頃、米国人の講師から「見本市を見に行って勉強しろ」とよく言われた。
そんな教えを少しでも守ろうとできるだけ見本市に足を運んでいるが、見本市のメッカである東京ビッグサイトでは何かしらの見本市が開催されていて、あまり見本市ばかりに行っていても仕事をする時間がなくなってしまう。従って、やはりメジャーな機械の見本市を見に行くことになる。
JIMTOF2020の中止
そんな中でも毎回見に行っている日本国際工作機械見本市(JIMTOF)の開催中止が決定した。JIMTOFは日本工作機械工業会の主催で隔年開催されている工作機械の見本市である。 毎回、多くの観客で賑わうこの展示会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下にあっては如何ともしがたく、会場展示は中止され代替としてオンラインで開催されることになった。
相次ぐ展示会中止…工作機械業界が本気で挑むオンライン展
ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
https://newswitch.jp/p/23549
見て、話して、勉強になることは多い
最初にJIMTOFに行ったのは2012年。当時は工作機械がどういうものかくらいは知っていたものの、まだまだ分からないことばかりだった。 ご迷惑を承知で各ブースに行っては営業担当の方にいろいろ教えてもらった。顧客でもなければ駄客にすらならない私などにでも親切に教えてくれる方が多く、本当に感謝であった。 中には私の真後ろで立ち話の商談が始まったことも有り、普通ではなかなか教えてもらえないような価格情報が聞こえてしまったりということもあった。 あるメーカーは「30年前に販売した機械でも部品を集めて修理できます」とデモンストレーションしていた。こういう情報も非常に有益でなかなか触れることができないものである。 また、何度も足を運ぶと会場の変化にも気付く。前回までごく僅かなメーカーが展示しているだけだったような類の機械が今回はあちこちで見かけるようになったということもザラにある。定点観測していると技術の変化や流行にも気付く。
オンラインで何が分かるか
COVID-19という突発的な社会情勢の変化で一気にオンライン見本市に移行することになってしまった今回であるが、興味深いことは多い。
今まで感じ取っていた"変化"が感じ取れるのか、あるいはもっと違う変化を感じることができるようになるかも知れない。それが良い方に出るかもしれないし、時価評価という傍流の分野にいて、コバンザメのように見本市にたかる私達にとってはもしかすると使いづらいものになってしまうリスクもある。
逆に、もう少し広く考えると、いままで見に行けなかったようないろいろな分野の見本市にもスキマ時間で見に行けるようになるかも知れない。東京にいてもビッグサイトまで足を運ぶのは少々たいへんとのことで、地方にいれば尚更である。オンライン開催になれば勉強するチャンスが広がるかも知れない。
見本市がなくなる?
しかし、なんでもネットでできるとなると、見本市自体がなくなるのではないかという危惧も頭に浮かぶ。本当にどうなるかは時が経つを待たなければならないが、恐らく全てがなくなるようなことはないのではないかと思う。 いつでもどこでも気軽に見られて、AIチャットでやりとりできればメーカーにも顧客にも利便性は高いかも知れないが、我々が評価をやるときも机上の資料と実物を見るのとでは大きなギャップを感じるのと同様、バーチャルでは埋めきれない何かがあるはずだ。ユーザーとしても数千万円から場合によっては数億の投資になるのにネットで動画を見るだけで決められることは少ないのではなかろうか。 そう考えると、この先数年間は新しい見本市のカタチを模索することになるのではなかろうか。
フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰
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