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5Gの健康被害をめぐる議論

執筆者の写真: Frontier ValuationFrontier Valuation

社会を一変させる5G

 第5世代通信規格(5G)が今年(2020年)3月から日本でもサービスが始まっている。

 5Gは高速かつ大容量の通信が可能であり遅延が少なくさらに同時に多数端末の接続が可能であることが特徴であり、全てのものがインターネットに繋がる社会を実現する通信インフラである。米中摩擦でアメリカのトランプ政権が中国のファーウエイ等を排除する方針を打ち出しているのも、5Gでアメリカが主導権を握るための戦術という見方もある。

 一方で、電波を使った技術に対しては、電波が人体に与える影響を懸念する意見がかねてから根強く、5Gについても例外ではない。


くーこさんによる写真ACからの写真

5Gの電波が人体に有害であるという主張

 5Gに関しては特に欧州を中心に人体に有害であるという主張が展開されている。

5G、重大な健康被害示す研究相次ぐ…世界で導入禁止の動き、日本では議論すら封印(biz_journal)
https://biz-journal.jp/2019/11/post_126809.html 

 特に欧州では、環境問題あるいは動物愛護などに関する意識が高く、時として過激な動きになることもある。そうした厳しい社会から見ると、日本は意識が低いというように感じられるのは当然かも知れない。

 例えば、日本ではよく使われる電子レンジであるが、マイクロ波が有害という考え方が特に欧州では強く、日本ほど好まれて使われておらず、加熱調理の主流はオーブンであるという。マイクロ波は人体に直接照射されると過熱してしまうから有害であるが、電子レンジの場合は人体に悪影響が及ばないようシールドが施されており、市販されている製品は安全とされる基準を満たしている。しかし、それでも人体に対し悪影響があると考える人がいるのは事実である。

リスクに対する考え方

 電波や電磁波についても発がん性の指摘があるとも考えられているが、今のところ調べた限りでは科学的知見として明らかに有害とされるものはない。だからといって全く健康に悪影響がないかといえば、それも明らかに立証されたものはない(不存在の立証はそもそも不可能であるが)。すなわち、「影響があるかもしれないが、社会的に許容できないレベルの健康被害は確認できていない」というのが現実に最も近い考え方ではなかろうか。

 こうした議論は東京電力・福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩をめぐる議論でも度々繰り返されていた。「年間100msvまで安全」とされる基準が正しいのか正しくないのかという議論である。ある人は1μsvたりとも放射性物質を浴びない方が良いというし、100msvを超える放射性物質を浴びても人体に影響はないという人もいる(さすがに一度に強烈な放射線を浴びれば人体に影響があるのは疑う余地はないだろうが)。

 「年間100msvまで安全」という基準は年間100msv以下の被曝であれば全く健康被害が起こらないというわけではなく、その程度であれば他の要因で健康被害が起こる可能性の方が高く、因果関係が不明というのが実態とのことである。

 そもそも「安全」の定義はゼロリスクをいうのではなく、「社会的に許容ができないリスクがないこと」をいう。  そう考えると、5Gの電波についても全く無害とまではいえないまでも、強烈な健康被害が出るというような話は少々疑ってかかった方がいいのではなかろうか。  実際に「5Gの実験中にムクドリが大量死」といったニュースが流れたが、実際にはムクドリの大量死は実験後数ヶ月経ってから起こった話で因果関係はなく、"フェイクニュース"だったという。  新しい技術に対して猜疑心が生まれることはやむを得ないと思うが、最低限、科学的知見あるいは立証を踏まえた判断は必要である。一方で科学的知見も森羅万象全てを説明しているものでもないから、疑いの目を完全に忘れてはいけない。  世の中で流れる無数の情報もこうした眼でフィルタリングするといいのではなかろうか。

5Gの健康被害をめぐる議論を聞いて思ったことである。

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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