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執筆者の写真Frontier Valuation

在庫がなくならない菓子の謎

更新日:2019年11月27日

少し前に、静岡県内で売られているスナック菓子「チーズあられ」が製造メーカーの廃業により在庫限りでなくなるというニュースが流れた。 チーズあられ生産終了、ファンから惜しむ声 浜松の会社清算へ -静岡新聞アットエス https://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/639845.html 私自身は、「そういえばそういうスナック菓子あるよね」という感覚であったが、ネット上では別れを惜しむ声が多数聞かれ、近所の薬局では特設の陳列棚に「在庫限りの販売となります」という貼り紙が貼られ、地味だけど人気のあるスナック菓子だと認識したところである。 ところが、「在庫限りの販売となります」という貼り紙があった薬局にその後何度行っても「チーズあられ」が陳列されており、「食品なのにそんなに過剰在庫を抱えていたのか?」と見る度に不思議に思っていた。 実は、その「チーズあられ」、別の会社が製造することになったのだそうだ。 郷土の味「チーズあられ」復活 浜松など販売再開 -静岡新聞アットエス https://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/676656.html よく考えてみれば、「在庫限りの販売となります」と言う貼り紙が無くなっていたのだから新しく製造されたものだと気付くべきだったが、私も観察眼が無かった。 この「チーズあられ」、新聞記事によれば、 1959年創業の浜名食品という会社が製造するロングセラーだったが、2015年に経営破綻し、2016年に設立されたエルミオーレ製菓に才蔵が引き継がれた。おそらく、第二会社方式の事業再生だろう。 ところが、 エルミオーレ製菓も業績不振で廃業し、岐阜県のメーカーが製造することになったのだという。

認知度が高いロングセラーには価値があり、チーズあられは業界関係者の中でも評価が高いのだろう。そうでなければ2度の危機を乗り越えることはできないはずだ。 もっとも、2度目の復活は販売終了を知ってニュースとして報じられた宣伝効果が大きいのではないか。逆に言えば、不振に喘ぐロングセラーも注目を浴びるきっかけがあれば復活する可能性が十分にあるということだろう。


今回の顛末から「チーズあられ」の商品としての価値はそれなりに高いということになるだろうが、その価値は水物で定量的に捉えることはなかなか難しいことが分かる。 奥が深い世界である。

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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