これは完全に私見と仮説ではあるが、不動産には3つのマーケットがあるのではないかと思う。
・グローバルな市場参加者によるグローバルマーケット ・「東京基準」で動く東京マーケット ・地元の人で構成されるローカルマーケット の3つである。
・グローバルマーケットは東京都心の超一等地あるいは北海道のニセコなど海外の人にも愛される観光地などで見られるマーケットである。
競合相手は海外の主要都市や、一流の観光地などで、価格は利回り重視で海外の代替競争不動産との比較になる。ハイグレードな超高層ビルや質の高い建物で構成される。市場参加者は超富裕層や国際的な投資ファンド、大企業など。
・東京基準で動く東京マーケットは、日本の主要都市など都市部で形成されるマーケットである。一般的な商業物件やファミリーマンション、戸建住宅などで構成される。価格は取引価格重視で、公的評価(公示価格・路線価や固定資産税の評価額)との馴染みが良い。市場参加者は中堅規模の不動産業者や、中堅以上の企業のサラリーマン、中小企業の経営者など。
・ローカルグループは地方の郡部が中心。投資的な要素はほとんどなく、生活に必要な実需中心の不動産。戸建住宅が中心で小工場や雑種地など。取引はほとんどなくマーケットといえるほどのボリュームはない。"市場"参加者は古くから地元に住む人が中心で、時折大都市からのIターンが出る程度。これらは小規模・零細な不動産業者が媒介する。全般的にマーケットというよりは自然発生的な取引が中心で相場が掴みにくく取引は相対価格で成立する。
ざっとこんな調子であろうか。 勿論、明確な線引きはできるものではないが、例えばグローバルマーケットの参加者はローカルマーケットの"普通の不動産"には興味がないだろうし、ローカルグループに属する人達がグローバルマーケットに参入しようとしたとしても門前払いどころか、門がどこにあるのかすら分からないといった感じだろう。 現状は、グローバルマーケットとローカルグループが徐々に拡大しているように見える。ローカルグループでは不動産ビジネスは成立しにくく売買マーケットからはこぼれ落ちている。さらにローカルグループの不動産は稼げないのに固定資産税や維持管理コストがかかってしまうので、実質的に資産ではなく負債になってしまう。固定資産税は東京マーケットで評価されるからマイナスにならないからである。一方、ローカルグループの不動産でもその特性を活かしてグローバルマーケットで戦える商品にできればグローバルマーケットの不動産になることができることもある。ただし、それは非常に難しく、失敗すれば一攫千金を夢見て大金を投じた巨大施設が見事な廃墟になる事例は今まで何度も見てきた光景である。 問題なのは、今行われている「地方創生」や「空家対策」がすべて東京マーケットのレベルで行われていることである。
経済の循環に入ることのできないローカルグループの不動産は自然に還すしかないと思われるが、その中から経済活動に資する物を探して活かすことができればローカルグループも変わってくるのではなかろうか。
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