ASA(米国鑑定士協会)の価値の定義の中には清算価値に関するものがあります。
清算価値は処分価値ともいわれるもので、破産や清算、担保物権の処分の際の価値を表すものです。
また、清算価値の主なものとして「任意清算価値」「強制清算価値」の2つがあります。
Orderly liquidation value/任意清算価値 売り手が現状有姿での売却を余儀なくされる場合に、買い手を見つける合理的な期間があるという前提で、清算売却により一般に実現され得る、特定日現在における金銭的に表示された予想総額である。
Forced liquidation value/強制清算価値 売り手が緊急に現状有姿での売却を余儀なくされる場合に、適切に公告され実施された競売によって一般に実現され得る、特定日現在における金銭的に表示された予想総額である。
この2つの価値の定義の違いは、処分のために与えられた期間の違いにあります。
任意清算価値(Orderly liquidation value)は、担保物件の換価処分のケースのように、債権者によって売買は強制されるものの、買い手を見つけるために合理的な期間が与えられるという前提に立ちます。
公正な市場価値は売買について強制がなく、多数の市場参加者がいることを前提に成り立つと考えられます。
買手が少数であれば「買い手市場」になりますから、買手有利な価格(低い価格)がつきます。
一方、買手が増えていけば買手の間に競争が生まれ、価格はそのもののもつ価値に収斂されていきます。
ただし、買い手が沢山集まるためには「売り希望」の情報がより多くの買い手に届くことが必要で、そのためにはある程度の時間が必要です。「ある程度の期間」は対象物によって異りますが、一般的には公正価値で想定する時間よりは短い期間となりますが、その具体的な期間には評価人が市場分析を行って評価書で明らかにするものです。
処分を急ぐと強制清算価値に近い価格しか付かず、思うように債権回収ができないこともあり得ます。 弁護士の方から聞いた話では、回収を急ぐあまり、適正な処分期間が与えられず、安い価格で処分されてしまうことも現実にはあるようです。
近年話題になっている動産担保融資(ABL)の世界では、任意清算価値(Orderly liquidation value)から処分のために必要な経費を控除した、純任意清算価値(Net Orderly liquidation value)が重視されます。ABLにおいては担保権設定時に弁済不能になることを想定したシナリオを予め用意しておき、そのシナリオに基づいた純任意清算価値(Net Orderly liquidation value)を評価サービスで提供しています。
こうした「出口戦略」の策定の場面でも、米国鑑定士協会の資産評価士(機械設備)がお役に立てますので、お気軽にご相談下さい。
(注)この記事は機械・装置等の動産に関しての記載です。 不動産の鑑定評価については「不動産の鑑定評価に関する法律」「不動産鑑定評価基準」による評価となりますので、可能なサービスが異なります。 また、弊会は不動産鑑定業者ではありません。不動産の鑑定評価の実施についてはパートナー事務所とのご契約となります。
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