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執筆者の写真Frontier Valuation

TPM活動をどのように資産評価に織り込むか

TPM活動というムーブメントがある。 実は機械設備の評価をやるということになって、右も左も分からない頃、技術士の方に教えて戴いたのが「TPM活動」という活動だった。 TPMとは「全員参加の生産保全」(Total Productive Maintenance)を意味する。もともとは日本電装が生産保全活動として始めたものであるが、1971年に現在の公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が正式に定義づけを行ったもので、日本発祥の生産管理技術として世界各国でも活用されるようになってきている。 TPMは「設備の体質を変え、人の体質を変え、企業体質を変える」ことが真の狙いであるという。

機械や設備というものはそのもの自体でも換金価値は有する。中古品として売ろうと思えば(ものにもよるが)マーケットで取引が成立する。すなわち価値が認められるということである。一方で生産要素と考えれば収益を生み出す源だから、どのくらい利益を生むかという視点も価値を考慮する上で重要になる。 生産を考える時、機械を動かす人、機械を動かす人の持つスキルやトータルで管理するスキルも収益性を左右する要素となる。 しかしながら、資産の区分でいえば、人に関する部分、技術などのノウハウに関する部分は無形資産に分類されるため、機械設備評価の範疇からは外れてしまう。その辺の分水嶺はなかなか複雑なのだが、機械設備の評価でも超過コストが発生する場合。例えば製造ラインの配置が良くないため、本来はやらなくていいはずの残業をやる必要が発生した場合、そのコストは経済的退化(E/O)として価値減の対象になる。 TPM活動は「全員参加の生産保全」の保全活動であり、生産システムに潜在するあらゆるロスをなくすための活動であるから、評価の立場からいえばTPM活動で得られた設備のロスなどの知見は評価作業を行う上で非常に相性の良いものではないかと推測され、ひいてはこれを活用することによって公正価値評価のクオリティを向上させることができるのではないかと考えられる。   機械設備の公正価値評価の世界は海外に大きく水をあけられてしまっている。TPMのような優秀な管理技術を日本は持っているのに、それをなかなか活用できないとことを思うと忸怩たる思いである。生産管理技術の成果を価値として会計に落とし込むのが、機械設備評価のプロフェッショナルが手掛けるべき仕事であり、なんとか活用できないか、そう思い続けて月日ばかりが過ぎている。

  IVS準拠の機械設備評価の世界において日本の評価人の存在感を示したいところである。

 

【参考文献等】   いまさら聞けないTPM(1):全員参加の生産保全、TPMとは何か?

  https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1601/20/news004.html

 いまさら聞けないTPM(2):TPM活動の進め方、ロス撲滅のための8つの活動

  https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1602/18/news003.html

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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