実は一昨年くらいから考えていた妄想がある。 それはブロックチェーンの仕組みを活用したファイナンスである。 2011年に米国鑑定士協会の機械設備評価人養成講座に参加した頃は、機械設備の評価は将来有望とみられていた。そのひとつが、IFRS(国際財務報告基準)の適用拡大である。時価の適用範囲が広がるものの、機械設備の評価をできる評価人がいないから養成が急務であるといわれていた。もうひとつABL(動産担保融資)の増大が挙げられていた。中でも在庫資産の評価は機械設備評価の派生分野と見られていて、金融円滑化法終了後の受け皿として有望視されていた。 ところが、IFRSの適用は米国が二の足を踏んだことで日本もこれに追随し、普及が思ったほど進まなかったこと、また、導入は大企業に限られたことから、受注できる評価会社も限られ、業務は予想ほど増えなかった。 ABLも処分市場が未整備であったり、拡張的金融政策の長期化、金融機関が手間とコストを嫌うなど評価以外の要因が大きく全くといっていいほど浸透しなかった。
しかしながらABLについてはアメリカで20%のシェアを持つといわれ、特に新規産業のスタートアップや再生の場面で有効とされているため、社会的には大きな有用性があるスキームであると考えられる。 一方、ここ数年でブロックチェーン技術が急速に進展を見せている。ブロックチェーンをいえば、ビットコインなどの仮想通貨を思い出す人がほとんどなのではないか。 そもそもブロックチェーンは 分散型の台帳技術あるいは分散型のネットワークであり、堅牢なセキュリティを持った継続記録であるから、銀行のオンラインシステムと外から見れば同じ物である。故に、仮想通貨というものが成り立つわけである。 しかし、それ以上に影響が大きいとみられるのはスマートコントラクトである。 スマートコントラクトはブロックチェーン上でプログラミングされた自動的な契約のことであり、契約内容とその履行条件をあらかじめプログラミングしておくと、契約条件が満たされた時に自動で取引が行われる仕組みである。 例えば、AさんがBさんに代金を払うとBさんはAさんに商品を引き渡すとする。 Aさんによる代金の支払いがスマートコントラクトに認識されれば直ちに商品の引き渡しが行われるという算段である。
単純化して考えれば難しいものではない。 街中にある自動販売機はスマートコントラクトそのものである。自販機にコインを投入し、希望の商品のボタンを押し、投入されたコインの額>商品の価格であれば、商品が受取口に出されるという流れの取引だから、スマートコントラクトそのものであると言える。 自動販売機は単純なものであるが、融資を果たして自動化できるものであろうか。
フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰
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