306.知財価値評価(先端情報)セミナー 米国CEIV制度 についてもうひとつ評価人にとって重大な影響のある論点があるので触れておきたい。 それが「批判的懐疑主義」というものである。
講義で使われたテキストは英語を日本語訳したものなので、果たしてこの訳が適切かは定かではないと主催者の注釈があった。
原典が入手できないので英語でどう表現されているか分からないがとりあえず、この用語を使うことにする。
「批判的懐疑主義」は批判的な懐疑論は評価専門家に対して評価契約を通じて、バイアスまたは虚偽記載のために経営者から提供された情報及びデータ、また、その両方を、経営者の経験と文書化と分析の十分性を考慮しつつ経営者によって提供される継続的に質問し、批判し、要求する(講習テキストをそのまま転記)
機械設備評価においては、今のところ慣習的に依頼者(おおよそ会社の経営者)から得られた情報は正しいものとして評価を行っている。
例えば、所有者に関する情報などは動産には不動産のような登記制度がないため依頼者の証言を信じるしかなく、調査もしようがない。
こうした状況では評価自体ができないから、仮定を前提として評価を行う。
また、他にも例えば稼働率のデータや、資産台帳のデータなどは依頼者の方に提供をお願いしているが、これらも必ずしも正しいとは限らないが、その信憑性も疑って一つ一つ調査していけば、評価に要する期間も費用も相当なものになってしまう。
また、全てを実際に観察することも不可能である。
だからといって、漫然として見過ごすのはやはりプロフェッショナルの仕事としては許されないものというのがこの「批判的懐疑主義」である。
実際に、評価において実査を行うと台帳やデータと現状の相違はかなりの確率で存在する。 「あるはずのものがない」、「台帳に2台という記載がある機械が実際には4台あった」というようなこともあった。 勿論、こういう場合に「台帳が正しいものとして」という前提をつけて評価はしない。 説明を求めて調べてもらうと大抵は原因が分かるので修正してもらう。 評価作業の前半は大体こんな淡々としたやりとりが続く。
しかしながら、経営者が故意に欺そうとして書類を捏造したり、周到に改竄工作を行った場合も見抜くことを要求されるとなると、これはなかなか難しい。
企業会計の世界でも監査が行われているにもかかわらず粉飾が後を絶たないのはプロの監査人を持ってしても不正を見抜くのは容易ではないか、さもなくば監査人が漫然と仕事をしているのか、いずれかだろう。
おそらく、MPFが求めているのは漫然と仕事をして不確かな情報を評価によってオーソライズ(公認)してしまうことがないように...ということではなかろうか。 いずれにしても、徐々に求められる水準が上がっているのは確かである。
米国鑑定士協会認定資産評価士(機械・設備) 松浦 英泰
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