一般にIVSを互換性を有するような鑑定評価業務においては市場分析を行うことが求められる。
機械設備の公正価値評価(時価評価)を行う場合に行わなければならない市場分析は複数ある。
ひとつは評価対象となる資産そのものの市場性である。
需要曲線と供給曲線の交点において市場価格と取引数量が決定される需要供給の法則はどなたでもご存じかと思う。
評価における市場分析も、その対象資産に対する需要と供給の状況を把握することがまず必要である。
分析すべき市場も、中古品の市場はもちろん、新造品の市場についても分析が必要となる。 償却資産の場合、同じ物あるいは類似品を作ることができる。すなわち再生産が可能であることから、コストアプローチの重要性が自ずから高まってくる。しかも、再生産される製品は日々進化を遂げているものであるから、新造品との比較も中古品の価値のポジションを決定づける上で重要な要素になる。 需給の関係を端的に示す市場滞留期間の把握は必ず行う必要があり(逆にこれを行わなければ妥当な評価を行い得ない)、市場滞留期間については評価書の必須記載事項ともなっている。
さらに、生産機械の場合は評価対象によって生み出される製品の市場も分析する必要がある。基本的に産業機械の価値はどのくらい稼げるかという視点が大変重要である。通常ひとつの機械のみで製品を生産できることは稀であるため、インカムアプローチの適用は困難なケースがほとんどであるが、企業経営者は稼げる機械に投資し、稼げない機械には投資しないのが鉄則であるから、その機械を使うことによってどんな製品が生まれ、それが市場でどの程度の競争力があるかという観点も重要である。
また、同時に機械を動かすための燃料などの動力源、原材料の市場、労働力供給の状況も機械設備の価値を左右することがある。
例えば、ガソリンが高騰している場合には少し値が張っても燃費の良いハイブリッドカーに対する需要が高まるが、ガソリン価格がだぶつき気味の場合にはトータルコストで考えるとハイブリッドカーでない方が経済的になることもある。
また、労働者が確保できないのにオペレーターの必要な機械を入れても機械を動かすことはできない。単に労働者を確保すればいいというわけでなく、技術を持った熟練の労働者が必要な場合もある。そうした事情も価値を左右することがある。
そうしていろいろ考えていくと森羅万象、いろんな事象が価値判断を左右することになる。もちろん、通常の評価依頼で全てを余すことなく追究できる時間とフィーが与えられることはないから、評価人がその匙加減を調節することになる。
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