機械設備評価においては、基本的に・コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチの3つの方法で公正価値を求めます。
日本の不動産鑑定評価基準でも、これと同様の3手法が規定されていますし、無形資産の評価(事業評価・知財評価)等でもこの3つのアプローチを使って公正価値を求めていくのは同様で、鑑定評価においては共通の考え方であると言っても良いでしょう。
但し、評価分野によって適用可能な方法や重視する方法は異なってきますし、3つのアプローチで得られた価値をどのように扱って最終的に公正価値に導くかについても違いがあります。
機械設備の分野においては、コストアプローチが主体、マーケットアプローチがそれに準ずるもので、インカムアプローチは適用が難しい場合が多いというのが実務上の印象です。但し、公正価値はマーケットの視点が欠かせませんので、マーケットアプローチが適用できる場合はマーケットアプローチの優先度が高くなります。
コストアプローチですが、評価対象物の新規の再調達コストを求めて、物理的劣化、機能的退化、経済的退化を控除することにより、評価対象物の公正価値を導くものです。
機械の場合は人工的な生産物で、取得コストも比較的把握しやすいこともあり、コストアプローチに馴染みやすいといえます。
まず、新規再調達コスト(対象物と同等の機能・性能を持つ資産の再調達に要するコスト)ことになりますが、方法としては①対象資産の取得価額を物価変動率の指数で調整して求める方法 ②現行で市場から新規に調達できる資産のコストから導く方法があります。
コストアプローチを考える上では、投資家は通常最も合理的な投資を行う、つまり、そのものの持つ価値以上の投資はしないという大前提があります。また、機械などの製品の場合、技術革新などで次々と新しい製品が生まれますから、現在市場で調達できる新製品の価格は重視しなければなりません。
したがって、評価の上では現行で市場から新規に調達できる資産との比較を極力行うこととされていて、ASAの基礎教育でも評価士は指数を「最後の手段」として考えるよう指導されています。
この記事は2016年8月9日に有限責任事業組合日本動産評価フロンティアのコラムで発表してものを再掲しています。
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