Covid-19で感染防止のため世界各国がロックダウンを実施し経済活動が停滞しましたが、2020年後半頃からその反動により世界中で経済活動が活発になったこと、金融政策の緩和で世界的なインフレ傾向になっていること、反面供給はサプライチェーンの混乱で需要に追いついておらず、原材料を中心に世界的な物価の高騰が続いていますが、鉄スクラップの価格も高値水準になっています。
スクラップ市場は機械設備のライフサイクルの中では最終的に行き着くマーケットであり、マテリアルとしての価格は機械の核となる最も確実な価値でもあります。
機械類は様々な原材料から出来ており、廃棄・解体をするとそれぞれ元の原材料に分けられるのですが、中でも鉄のスクラップは代表的なものの一つであり、マーケットでも最も参考にされるものの一つであります。
鉄のスクラップ価格も上昇しています。
鉄スクラップは景気変動を知る上での参考指標でもあります。使用される頻度としても多く、再生も比較的容易であることから、景気悪化の場合には廃棄が増えるつまり供給が増加することから市場価格が下落しますが、景気回復局面では鋼材の需要が増え、原料として使われる鉄スクラップも需要が増えることにより市場価格が上昇します。
大体の目安として3万円/トンくらいが目安だといわれていますが、実際のマーケットでは2~3万円台のレンジで市場価格は変動しています。
供給が増え、だぶつき気味の時にはこれ以下になることもあり、逆に需要が過熱気味の時にはこのレンジを超えることがあります。
一般社団法人日本鉄リサイクル工業会が公表している価格推移表によれば、最新の数字では2022年4月の関東・中部・関西三地区平均で65,300~66,500円/トンとされています。過去5年間では最も高い水準で、最も低かった2020年3月の18,000~19,000円/トンと比較すると概ね3.5倍で、僅か2年で急激に上昇したことが分かります。
一方2003年からの推移を見てみると、最高は2008年6月で67,300~69,200円が最高で、現在はこれに近い水準にあります。今回はこれを超えて上昇するか、逆に今が最高で頭打ちになるかは分かりませんが、2008年の場合は8月には4万円台/トンまで急落し、その後9月にいわゆるリーマン・ショックで世界経済が大混乱を来したことから、10月には一気に1万円台/トンまで急落しました。
現在の状況を見ると、アメリカの中央銀行が金融引き締めを模索しており、欧州などでもこれに追随する動きがあること、ロシアのウクライナ侵攻が長期化しており事態の打開が見通せないことなどを考えると高値水準が長期間持続する可能性は低いのではないかと思われます。
リーマンショックの時のような急激な市況悪化がないことを願いたいですが、短期間に市況が急騰していることを考えるとそのリスクは決して低くはないと考えられます。物価上昇を問題視する声は大きいですが、"逆回転"が起こるリスクもそろそろ覚悟しておいた方が良いかもしれません。
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